私に触れていた手を、何の躊躇もなく離した稜君。
本当は、その行動に信じられないくらい胸が痛んだ。
稜君が触れたいと思う女の子。
それは、私じゃない。
そしてそれは……きっと、稜君も触れられない女の子。
私は一体、何を考えているんだろう。
少し前まで、秀君がいるからと押し殺していた稜君への気持ち。
秀君がいなくなった途端、それがまた湧き出てくるなんて、都合が良すぎる。
自分のフラフラする心が、本当に嫌だ。
「美月ちゃん?」
黙り込んだ私を覗き込む稜君のキレイな瞳を、真っ直ぐ見返す事さえ出来ない。
「稜君」
「なーに?」
「そろそろ、帰ろっか!」
だから私は、誤魔化し笑いを浮かべながら、そう声をかけたんだ。
これ以上、稜君の傍にいちゃいけない。
傍にいたら、きっと気持ちが止まらなくなってしまう。
それが分かっているのに……。
何度も何度も湧き出てくるのは、それとは全く矛盾した考え。
“彼女にみたいになりたい”と、今まで以上に強く思ってしまう。
稜君に、こんなにも想われるおねぇー。
私はやっぱり、あなたみたいになりたいよ――……。

