「はぁ……っ! もー、お腹痛い!!」
数十分の後、目に溜まった涙を拭いながらお腹をさする私を見て、
「よかった」
稜君は小さくそう呟くと、にっこり笑った。
そこでやっと、稜君の面白話の理由がわかった私は相当鈍いのかもしれない。
「……」
稜君はきっと、さっきの事で私が落ち込んでると思って……。
この人は、わかってるのかな?
ヘタに慰められると、かえって辛い気持ちになる時もあるって。
だから、笑わせてくれたの?
すごく嬉しかった。
嬉しかったのに、優しい、温かいその気持ちに触れて、一瞬緩んでしまった私の弱い心。
「男の人って、どうして好きでもない女の子に触れたり、平気でエッチしたり出来るのかな?」
「……」
「秀君も最上さんも……男の人って、どうしてそうなんだろう」
そこまで口にして、ハッとした。
慌てて向けた視線の先には、少し悲しそうに表情を歪める稜君の顔。
「ご、ごめんっ!」
「……何の“ごめん”?」
ゆっくりと上げた視線で、真っ直ぐ私のを見据える。
――ドクン。
どうしてだろう……。
彼の瞳に、何故か心臓が大きな音を立てる。
その声と表情が、いつもの稜君とどこか違う気がして、私は逃げるように下を向いた。
「最上さん、関係ないのに……。それに“男の人”とか一括りにしちゃって、稜君みたいな人だっているのにね」

