ただ、ぼんやりと。
花火が終わり、まだ微かに煙の残る空を、二人でしばらく見上げていた。
お互い口を開く事もなく、ただ静かに。
でも、その時間も何だか凄く優しくて心地いいものに感じるから不思議。
「この前ね……」
その沈黙を静かに破ったのは、稜君の優しい声だった。
「うん?」
「この前の試合の時、俺、本当に航太のイチャイチャっぷりをキャプテンとかに話しちゃったんだ」
「え?」
脈絡もないそんな事を、突然楽しそうに話し始めた稜君に、一瞬戸惑う。
「そしたら航太、マジギレしちゃってさぁ……。“ポーキ、マジでポークにしてやる”ってボソッと言った後、口きいてくれなくて」
「ふっ」
その時の様子を想像して、笑いが洩れる。
そんな私を、細めた目で見た稜君は、またゆっくりとその口を開いた。
「結局、試合の前半が終わるまで、一言も口きいていてくれなかったんだよ!?」
「あははっ!」
「俺と航太は以心伝心だからまだ良かったけどさぁ~。公私混同もいいとこだよねぇー!」
ちょっと膨れた稜君に、私も笑いながら声をかける。
「だって、元はと言えば稜君が悪いんじゃん!」
「えぇ……。だって、人んちでイチャつくなら、それくらいの覚悟は必要でしょー」
よくわからない稜君の理論に、また笑いが込み上げる。
「あとね、こないだなんてねー……」
それから稜君は、笑いすぎで私のお腹が痛くなるほど、楽しい話を延々とし続けた。

