「えぇーーっ!!」

その日私は、久し振りに秀君に対して、感情を露わにしていた。


稜君への気持ちは、やっぱり封印したまま、私は秀君との付き合いを続けている。

秀君の事が嫌いなわけじゃない。

だから余計に、どうしたらいいのか分からなくなるんだ。


「どうしてー!? それはずっと約束してた事じゃん!!」

「……しょうがないだろ?」

私の声に面倒臭そうに溜め息を吐く秀君を、不貞腐れて見上げる。


久し振りに時間が出来た秀君の部屋に泊まりに来たのに、大喧嘩なんて本当に最悪。

理由は、くだらない事かもしれないけれど、前から約束していた花火大会に、秀君が行けなくなったと言い出したから。


「あー……美月。悪いんだけどさ、来週の花火大会、行けなくなった」

ちょっとバツが悪そうに、私から視線を逸らして言ったその言葉に愕然とした。


「その用事って、どうしてもその日じゃないとダメなの?」

「あぁ」

視線を合わせないまま、そう言った秀君。


「楽しみにしてたのに……」

頬を膨らませて、未だにいじけている私の頭をポンポンと撫でた秀君は、

「今度、埋め合わせするから」

そう言ったっきり、もうその話題に触れる事はなかった。