「俺、本当に情けないね」
彼の震える声が、私の胸をひどくしめつけて、それがあまりにも苦し過ぎて、ゆっくり顔を上げようとした。
それなのに、
「今はダメー」
ほんの少し笑った稜君の手が、その邪魔する。
「こんな情けない顔見られたら、ホントにフラれちゃうかも」
そのまま、またクスッと笑った後、深い溜め息を一つ吐き出し、私の肩に頭をもたげた。
稜君……。
私はその震える背中に腕を回し、ギューッと抱きしめる。
こうする事で、気持ちが全部伝わればいいのに。
「ごめん。あのね――」
だけどそれは出来ないから、ちゃんと言葉で伝えなきゃ。
「稜君の為じゃなくて、私が稜君の傍にいたいの」
「……っ」
「離れてるのは、もう嫌」
「うん」
自分の気持ちを、自分の言葉で。
「だから、ずっと傍にいさせて?」
「美月ちゃん」
「うん?」
「それって――」
「え?」
「プロポーズ?」
「えぇっ!? ち、違うから!!」
まさかそんな風に取られるなんて!!
焦りながら顔を上げた私の目の前には、ちょっと困ったように笑う、少し目の赤い稜君の顔。
「冗談。プロポーズは俺がするから」
「……っ!!」
「だから、もう少し待っててね」
そう言うと、やっといつものように、ふわりと笑った稜君は、
「今はまだ、これしか言えないけど」
そう呟いたあと――。
私の目を真っ直ぐ見据え、甘く優しい声で囁いたのだ。
「傍にいて。ずっとずっと、傍にいて?」

