「稜君! 稜君……っ!!」

一気に溢れ出した大粒の涙が、抱きついた稜君のコートをどんどん湿らせていく。


「稜君……っ」

逢いたくて逢いたくて、

逢いたくて、逢いたくて、

もう、どうしようもなかったんだ。


稜君にフラれたと思って苦しくて悲しくて、その時のことを思い出しただけで、心臓に握り潰されたような痛みが走る。


「――どうして、ここに?」

涙を零し続ける私に、躊躇いがちに言葉を落とした稜君を見上げると、驚きよりも戸惑いに近い表情を浮かべている。


「ごめんなさい!!」

「……え?」

「私バカだから、ずっと稜君にフラれたと思ってたの」

真顔のままの稜君に、私は必死に言葉を繋げていく。


「メール、くれたでしょう?」

「うん」

「途中まで読んで、勝手にフラれたと思い込んで」

「……美月ちゃんが?」

こんな時でさえ、稜君が呼んでくれる自分の名前にドキドキして、どうしようもない程に鼓動が速くなる。


「それで、すごく辛くて……。メールを最後まで読めなくて」

未だに戸惑いの表情を崩さない稜君に、私はもう一度、強く抱きついた。


「ごめんなさい……。メールの本当の内容を、昨日初めて知って」

「……昨日?」

まだ混乱して、事態を把握し切れていない様子の稜君は、私の瞳を見つめながら同じ言葉をくり返す。

だけど、何かに気付いたかのように、ハッとして目を見開いた。