「……くしゅんっ!! うぅ~、さぶいー」

くしゃみの後、鼻を啜った私は、コートの上に羽織ったストールをもう一度肩の上に巻き直してマフラーに顔を埋めた。


傍から見たら、相当怪しい人かも。

あの試合の日のおねぇーに負けないくらい、マフラーでグルグル巻きの私は、稜君の住むアパートの、玄関先の階段に丸まりながら腰を下ろしていた。


多分時間は、夜の九時過ぎ。

吐き出す真っ白な息は、モヤモヤと形を変えながら昇っていって、黒い空に溶け込んでいく。

もうかれこれ二時間近く、ここでこうして座っている私の身体は、もう至る所の感覚がなくなるほど冷え切っていた。


勢いで来れば逢えると思って来ちゃったけど……。

稜君が帰って来なかったらどうしよう。

遠征とかだったら、完璧にアウトだ。

ちゃんと試合日程、確認してから来ればよかった。


「はぁー……。私って、ホント計画性がないなぁ」

湧き出てくる不安を吹き消すように一人呟いて、顔の前で合わせた手に息を吹きかけた。


――その瞬間。


「美月……ちゃん?」

すぐ目の前からかけられた声に、私は縺れる足に力を入れて、必死に立ち上がった。


「稜君!!」

「……っ」

驚き過ぎたのか、目を見開いたまま固まる稜君に駆け寄ると、その背中に腕を回してギューッと抱きつく。