あの日――今後の事を考えたいと、そう告げられた日以来のそのメール。

“もう連絡がこなかったら、どうしよう”。

考えたくもないのに、やっぱりそんな事を頭の片隅で思っていたから、そのメールを見た瞬間はホッとした。

だけど、ホッとするのと同時に怖くなった。


これからの事を考えさせて欲しいと言った稜君。

あの時点で、私を連れて行けないと言った稜君の気持ちは、そんなにすぐに変わるもの?

もしも変わらなかったら……。

そう思うと、怖くて怖くて仕方がない。

だって私は、きっと稜君が一番嫌がる言葉を口にしてしまったから。


いつも私の幸せばかり願ってくれる稜君は、私がこの恋で辛い想いをしていると思ったら……きっと、私の傍からいなくなる。

それが手に取るように解ってしまうから。

だから、怖い。


“傍に行けなくても、稜君が好き”――そう言えたらいいのに。

あの時、自分で口にしてしまった言葉が、その邪魔をする。


しかも帰国を知らせるそのメール以外、稜君からの連絡は一切なくて、正直、どうすればいいのかがわからない。

自分から連絡をしようと思って、メールの作成画面を開くけれど、いざそこに文字を打ち込むとなると、何を書けばいいのかわからなくなる。


――会って話たいと思っている稜君に、一体今、何を話せるの?

そう思うと、携帯を握りしめたまま私は動けなくなって、結局、それを行動を後回しにしてしまうのだ。


「はぁ……」

何度も吐き出される溜め息で、心なしか、自分の周りが曇っている気さえしてくる。

頭がボーっとして、靄がかかっているような、そんな感覚。


ダメだなぁ。

一日一日と迫ってくる稜君の帰国日が、今回だけは、何だか怖い。


強くなりたいと思って、頑張って自分なりに強くなったつもりだった。

けれど頑張った分、傷付くのも怖くなってるのかも知れない。


「それって結局、強くなってないじゃん……」

自嘲気味に笑った私は、今にも落ちてきそうな真っ黒な空に向かって、小さく呟いた。