実家の客間に、礼儀正しく並べられた布団の上。

目覚めた私の瞳に映ったのは、私よりも少し先に目を覚まして、天井を見上げながら、細くて長い溜め息を吐き出す稜君の背中だった。

そのまま稜君は、何かを振り払うように頭を左右に振る。


「稜君」

思わずその背中に声をかけてしまった私に、ゆっくりと向き直った稜君は、いつもと同じように、ふわりと笑って髪を撫でた。


「おはよ!」

「おはよう。……考え事してたの?」

「んー? いや、俺ってやっぱり日本人だなぁと思って。久し振りに寝たけど、布団っていいねー」

まるで何かを誤魔化すように、稜君はまた笑った。

その瞬間、胸に感じた鈍い痛み。


――この痛みは、何?

その正体を探るように、彼を見つめたまま考え込む私に、稜君は笑顔を崩さず言ったんだ。


「たくさん充電できたから、また頑張らないとっ!」

それを聞いたら、やっぱり何も言えなくなって……。

結局、それからも核心的な話題に触れることもなく、稜君はイギリスに帰って行った。