「だってママさん、美月ちゃんにそっくりで可愛いんだもん!」
「はぁ!? 似てないよ そもそも私、あんなにミーハーじゃないしっ!」
必死に否定する私を見て稜君がまた笑うから、リビングに着く頃には、私はすっかり不貞腐れていた。
「お父さんもそろそろ帰ってくるって!」
稜君に会えた事がよっぽど嬉しいのか、「あ~ん! もっと稜君とお話したいのに!」なんて年甲斐もない事を言いながら、バタバタと食事の支度を始めたお母さん。
そんな彼女を見て、立ち上がった稜君は、
「俺も手伝っていいですか?」
そう言うと、お母さんの隣に並んで、楽しそうにお願いされたサラダ用のレタス千切りを始めたのだ。
最初は不貞腐れたままそれを見ていた私だったけれど、楽しそうな二人の様子に、次第に口元が緩んでいく。
――稜君、キミの方がよっぽど可愛いよ。
その人懐こい姿に、私は一人ほくそ笑みながらソファーに座り、クッションに顔を埋めた。
「うちの次女は、彼氏にお手伝いをさせて、自分はテレビ見てるのか~?」
そんな私の後から、笑いながら声をかけたのは帰って来たお父さんだった。
「人聞き悪い事言わないでよー!」
振り返った私の頭を大きな手でポンポンと撫でてから、まだ帰って来た事に気付いていない、お母さんと稜君の元に向かう。
「ただいまー」
いつも通りの、のんびりとしたお父さんの声が聞こえた瞬間――。
キッチンから聞こえたのは、“ガシャーーン”という、明らかに何かを落とした音。

