おねぇーだったら、きっと何かにヒントをくれて、大切な事に気付かせてくれる気がする。

そう思った私は、携帯を手に取り、おねぇーに電話をかけた。


「……」

相手はおねぇーなのに、何故かいつもよりも心臓がドキドキする。


「もしもし? 美月?」

「おねぇー……」

電話が繋がった瞬間、私の緊張の糸がプツリと切れた。


「どうした?」

耳に届く柔かいその声に、呼吸が震え、今まで知らぬ間に耐えていた涙が頬を伝う。


「おねぇー」

「うん」

「私、どうしたらいい?」

「……」

「どうしたら稜君の事、助けられるのかな?」

「――美月」

「どうしたら稜君、楽になるの?」

私のその問い掛けに、おねぇーは一瞬黙り込む。


「美月、ちょっと航太と話してみる?」

そのままの優しい声で、何故かそう尋ねてきたんだ。


――どうして?

その私の気持ちに気付いたかのように、おねぇーはもう一度口を開く。


「きっと航太だったら、全部じゃないにしろ、川崎君の気持ちが解るはずだから。その話を聞いた後、私ともう一回話そう?」

「……うん」

「ちょっと待ってて。航太に話してかけ直すから」

そのまま電話を切ったおねぇーは、やっぱりどこまでも優しいと思った。


ちょっと前に、国際電話が高くて請求書を見るのが怖いと言って笑った私。

その言葉を、きっと覚えていたのだと思う。

稜君の声が聞ける、今ある唯一の通信手段が国際電話だから……。


一度切れた携帯が、手の中で再び震える。

おねぇーのその気遣いが嬉しくてまた、こっそり涙ぐんだ私の耳に、少し心配そうな航太君の声が聞こえた。


「もしもし、美月さん?」

「航太君。……ごめんね」

「謝る事じゃないですよ」

「ありがと」


少し言葉に詰まった私の胸に、

「俺で力になれるなら、いくらでも」

真っ直ぐな航太君の言葉が響いた。