あの日、稜君を欠いたリヴァプールはどうしても劣勢になり、結局試合には敗れてしまった。

稜君は電話越しに少しの沈黙を挟んで、「情けないね」と、自嘲的に笑った。


それからも稜君の調子は簡単に戻る事はなくて、少し上がるとまた下がって……その繰り返しだった。

あの試合後、稜君からの電話とメールは途絶えがちになって、テレビ越しに見る稜君は、いつも空を見上げていた。

その度に私の胸はギュッとなる。


本当はもっと一緒にいたいけれど、仕事でまとまった休みなんて、そうそう取れるはずもない。

稜君の引っ越しまでに私が彼の元に行けそうなのは、たったの一回きり。


――私は、本気で考え始めていた。

どうしたら彼の負担にならずに、彼の傍にいられるかを。

だけど、それを今の稜君は望んでいるのかな?


あの時、航太君に私を連れて行きたいと話していた稜君。

でも今は状況が全く違う。


当たって欲しくなかった稜君のあの時の予想は現実になって、彼は今、それと必死に戦っているのだ。

責任感の強い稜君は、きっと私よりも自分がしっかりしないといけないと思うだろう。


自分が目標を見失っている時に、私が隣にいたら……。

稜君は、私の人生まで背負わないいけないと思って、もっと辛くなるんじゃないだろうか。


考えても考えても、どうすればいいのかわからないし、稜君の今の本当の気持ちを知りたいと強く思うのに、それが出来ない。


稜君に聞く?

そんなの無理に決まっている。

こんな時、どうしたら……。


点けっぱなしにされた、ろくに見てもいないテレビの音が自棄に部屋に響いて、私は頭を抱えた。

こういう時、私の頭に浮かぶのは、やっぱりおねぇーだった。