「佐々木さん、最近元気ないですね」
一緒に残業していた、ユメちゃんの言葉に、ハッとして顔を上げた。
「あぁっ!! ごめん、ちょっとぼーっとしてた!」
誤魔化し笑いを浮かべる私を、まだじっと見上げるユメちゃん。
「ごめん。ちょっと公私混同中」
ちょっと困ったように頭をポリポリ掻いた私は、作業を再開しながらまた笑う。
「何かあったんですか?」
「んー、ちょっとねー……」
今日も稜君の試合がある。
あと一時間程で始まるそのうち試合のスタメン予想を、さっきパソコンで確認したら、そこに稜君の名前があった。
「佐々木さん、今日は先に上がって下さい!」
「へ?」
腕時計に視線を落とした私を見たユメちゃんが、突然そんな事を言い出すから、変な声が漏れ出てしまう。
「そもそもこれは、私の仕事だし……」
「でも」
「大丈夫です! 私、佐々木さんのおかげで、だいぶ強くなったんですから!」
もう一度笑いながら「あがって下さい」と付け加えたユメちゃんに今日は仕事をお願いして、素直に帰る事にした。
正直、会社にいても全然集中できなくて、むしろ足手まといになっていたのかもしれない。
「はぁ……。しっかりしないと」
頭をブンブン振って、だいぶ荷物の減った稜君のマンションに向かってトボトボ歩き始める。
帰り道の途中、もしかしたら試合が始まる前に稜君が携帯を確認するかもしれないと思って、メールを作成しようと携帯を取り出して。
だけど、画面をタップする指がなかなか動かない。
なんて送ればいいのかな……。
悩みながら歩いていたら、もうマンションの近くまで来てしまって、いっその事と思いながら、部屋に戻ってポーキーと一緒に撮った画像を添付したメールを作った。
【稜君らしく、楽しんでね!】
こんな事しか言えないけれど、それが私の本心だ。
私は、稜君が子供みたいに楽しそうにボールを追う姿が大好きで……。
甘い考えなのかもしれないけれど、それを忘れないで欲しかった。
送信ボタンを押して、“送信完了”のメッセージが表示された画面をボーっと眺める。

