「少しは眠れた?」

「うん」

案の定、次の日の朝になると、私の瞼は腫れていた。

その私の顔を見て、ちょっと困ったように、だけど優しく笑ったおねぇー。


「これでちょっとはマシになるといいんだけど」

言いながら、温かいタオルと冷たいタオルを、私の目に交互に当てる。


「……ごめんね」

おねぇーと航太君は、もうスペインに帰ってしまうから、ゆっくりしてもらいたかったのに。

結局こうやって朝っぱらから迷惑をかけてしまった私は、シュンとして唇を尖らせた。


「ほらほらっ! いつまでもそんな顔してたら、川崎君も心配するよ!!」

おねぇーはそう言って、私の両頬をグイグイと引っ張る。


「……ん。そうだね」

自分でも分かるくらいの作り笑いを無理やり浮かべた私を、じっと見つめた後、おねぇーは静かに口を開いた。


「ねぇ、美月? 詳しい事はわからないけど、後悔はしないようにね。それと、自分の気持ちに嘘は吐かないように!」

そのおねぇーの言葉は、すごく重みのある言葉で……。


「うん」

私の頭の中で、何度も何度も、繰り返し響き続けていた。

それから、だいぶ目の腫れのひいた私を見て優しく笑うと、頭を一撫でしたおねぇーは、ゆっくりと立ち上がる。


「さてっ! じゃー私は、朝ゴハンでも作ってこようかな!」

「私も手伝う!」

「そう? じゃー、お願いしちゃおーっと!」