スッと立ち上がって隣に立った稜君は、私の頬っぺたをその温かい手で包み込んで、にっこり笑う。
「試合中、身体冷えたでしょー? 今お風呂沸かすから、ちょっと待っててね!」
「ありがとう。稜君の手、本当に温かいねー!」
そう言った私の笑顔を見て、目を細めた稜君は、私の耳元にすっと顔を近づけて、
「今日は一緒に入れなくて、残念!」
クスクスと、私をからかうように笑った。
「あっ! 航太と美青ちゃんは、一緒に入ってもいいからねー」
そのまま、お風呂に向かいがてら、目の前の航太君に声をかける。
「だってよー、美青。どうするー?」
「はっ!? 入りませんからっ!!」
「なんだよ。つれねぇーな、今日の美青ちゃんは」
言いながら、いつものように“くくくっ”と笑う航太君の肩の辺りを、おねぇーはバシッと叩く。
本当に、いつも仲良しなこの二人。
ケンカとかするのかな?
……当然するよねー。
だけど、それさえも羨ましく思ってしまう。
おねぇーはおねぇーで、私は私。
ちゃんと頭では理解しているはずなのに、心が上手くそれに追いつかないから難しい。
「私は美月と入るのっ!!」
「へっ?」
考え込んでいたせいもあって、急にかけられた彼女の言葉に、ちょっと驚きながら視線を向けた。
「だって、最近一緒にお風呂に入ってないでしょー?」
「そうだけど」
この年になったら、温泉でもない限りあんまり一緒に入ったりしない気もするけど。
「えー! ずるいっ! だったら俺も一緒に入る!!」
「えっ!?」
私達の会話に飛び入りしたのは、お風呂掃除から戻った稜君で……。
「何でお前が入るんだよ!! お前は一人で入れっ!!」
その稜君に、航太君はガッツリ蹴りを入れた。
四人でいると、本当に笑いが絶えなくて、“ずっとこうしていられたらいいのに”なんて、楽しそうに笑う三人を見ながら思ってしまう。

