「美月ちゃん、温かーい!」

そう言われてみれば、稜君の身体は結構冷えている。


「稜君、いつから待ってたの?」

「んー? いつからだっけ?」

私を抱きしめたままちょっと上を向いた稜君の気配に、私もつられて上を向く。

すると稜君は、私に視線を落とし、至近距離で目を見つめると、

「美月ちゃんに逢うのが楽しみ過ぎて、どれくらい待ってたのか忘れたー」

楽しそうに笑いながら、そう言ったんだ。


変わらない稜君の笑顔と優しい空気に、私の心がまたポカポカと暖かくなる。


「風邪ひいちゃうよー?」

「ん~。平気だよ!」

だけど。


「ありがとう。すっごい嬉しい」

「……」

「だってね? 一秒でも早く逢いたかった!」

抱きついたまま見上げる私に、稜君は茶色い目を丸くした。


「あーあ。こんな所で、困ったチャンだなぁー」

「“困ったチャン”? 誰が?」

突然の言葉に、困惑しながら目を瞬かせる。

だって、まだ再会して数分なのに……。

稜君を困らせる“何か”を、私は仕出かしたのだろうか?

思わず眉根を寄せた私の顔を見て笑った稜君は、そのシワを両手でキュッと伸ばすと、言ったんだ。


「美月ちゃんに決まってるでしょ?」

「え?」

そのまま呆気に取られる私の唇に“チュッ”と可愛い音を立て、触れるだけの短いキスをした。


「……っ」

驚いて、未だに至近距離にあるその顔を、見開いたままの目で見つめる。


「家まで、我慢出来なくなっちゃた」

だけど稜君は、動揺すると私は裏腹に、飄々とした様子で、ニッコリ妖しく微笑んだ。