そんな私の頬にそっと触れた稜君は、困ったように笑って言ったんだ。

「ごめん。それはホントは建前でね。来月まで、俺が待てなくなっちゃった」

「え?」

「だってさ、美月ちゃんが我慢してくれてるのに、俺が我慢できなくなるって男として情けないじゃん!」

ちょっと口を尖らせる彼の表情に思わず吹き出してしまった私を、ちょっと睨んだ稜君。

それに、今度は私が困ったような笑顔になる。


「それなら、もっと早く素直になればよかった」

「……」

「逢いたかった」

「うん」

「稜君に逢いたかったよ」

「うん。俺も……」

抱きしめる腕に力を込めると、懐かしささえ感じるその温もりに、また少し涙が零れてしまう。