駅に到着した時、タイミングよく滑り込んだ電車に揺られながら、私は頭を窓にもたげて夜空を見上げていた。
その空が、昨日とはまるで違う物のように見える。
それも、稜君のおかげ。
電話を切る間際、稜君が言ったんだ。
「俺はいつもね、“美月ちゃんは10,000キロも離れた街に、暮らしてる”って、思わないようにしてる」
「え?」
「“10,000キロ先の空の下に、美月ちゃんがいる”……そんな風に思うと、全然違うんだよ? 言葉って不思議だよねー」
稜君は、言葉に詰まる私に、そんな風に言って笑っていた。
きっと、優しく目を細めながら。
あなたの言葉は、本当に魔法みたいだ。
逢いたい。
逢って、もっともっと――これ以上ないくらい近いところで、あなたの声を聞きたいと思った。

