「どうしても稜君の声が聞きたくなったの。それで空を見たら、もっともっと逢いたくなっちゃった」

「……」

「稜君?」

「うん」

「ごめん」

「……え?」

戸惑いを含む稜君の声が、携帯の向こうから聞こえる。

その声に、少しだけ躊躇したけれど、もう決めたんだ。


「淋しい。ずっとずっと、言えなかった」

「……」

「稜君?」

「……ん?」

もしかしたら、困らせてしまうかもしれない。

だけど稜君は、絶対に受け止めてくれる。


「――逢いたいの」

「美月ちゃん」

「逢いたいから、」

私はゆっくりと息を吐き出して、静かに言葉を紡いでいく。


「来月、逢いに行ってもいい?」

「来月?」

「うん。二連休と有給一日取って逢いに行く。ほとんど一緒にはいられないけど」


それが今取れる精一杯の休み。

それでも……。


「それでもいいから、逢いたいの」

それが、私の今の一番の気持ち。

そして今の私に出来る事で、したい事。

今はただひたすらに、稜君に逢いたいんだ。


「ダメかな?」

自分の言いたいことを伝えきって、何も言わない稜君に、少し戸惑いながらそう口にする。

そんな私の耳に、稜君の優しい声が響いた。


「俺が美月ちゃんに、ダメなんて言うと思う?」

「……」

やっぱりそう。

私は、どうしてあんなにも不安になっていたんだろう。

稜君は私の全てを、こうして受け止めてくれるのに。