「佐々木さん。これ、お願いね」
「はい、わかりました」
視線も合わせずに差し出された物を受け取った私は、笑顔を浮かべて良い子の返事をする。
最近、私の仕事として定着したらしい、顧客名簿の管理――というか、ただの打ち込み作業。
どうやら、一人でも競争相手を減らしたいという先輩方の意向は見事一致したらしく、私はすっかり、裏方の業務が多くなっていた。
まぁ、これだって立派な仕事だし。
でも接客がしたくてこの仕事を選んだ私にとって、現状は少し――というか、かなり辛かった。
稜君との関係も、相変わらずで……。
だけど稜君の試合を観ていて、明らかに彼のスキルが上がっているのを目の当たりにすると、私も頑張らなきゃって、そんな風に思えた。