仕事が休みで、稜君の試合がある日は、例え何時になろうとも、テレビの前に座り込んでそれを観るのが日課になった。

不思議そうに、テレビの中の稜君を見つめるポーキーを、膝に乗せて。


「ポーキー! 稜君出てきたよー!」

稜君がベンチにいる時は、全くテレビに見向きもしないポーキーだけど、まるでその言葉が解るみたいに、稜君がピッチに上がった途端、パッと顔を上げる。


「ふふふ。ポーキー、稜君頑張ってるね。スゴイね!」

そのままポーキーをギュッと抱きしめると、どうしても稜君の言葉を思い出してしまう。


“言っとくけど、ポーキー男の子だからね”。


「稜君ってヤキモチ妬きだよねー? ポーキーをギュッてするくらい、いいじゃんね?」

呟いてポーキーをそっと離し、またテレビに視線を戻した。

稜君は、フルで出場する日もあるけれど、途中交代が多くい。


「やっぱり選手層が厚くて、大変だよー」

電話でもそんな風に言っていた。

だけどその口調が辛そうではなくて、凄く楽しそうだから、私はホッとしていた。


稜君の試合を観ていると、色んな事を思い出すから……。

気が付くと、試合後にサポーターから大きな拍手を貰って、それに笑顔を返す稜君が画面に映っていたりして。

そして、窓の外が白々と輝き出した頃、知らぬ間にウトウトしていた私の携帯が、小さな音を立てるんだ。


【試合勝ったよー! 今日はサポーターに‘Ryo’コールされたよ! 嬉しかった!】

【リヴァプールは快晴で、星がたくさん出てるよー。キレイな月も!】


【日本は、どうですか?】