「稜君、ホンッットにカッコ良かった!! すっごかった!! 感動したーー!!」
部屋に戻っても、スタジアムからの興奮が冷めやらない私に向けられる、満足げな稜君の笑顔。
「そうでしょー? 俺はやれば出来る男だもーん!」
「あははっ! さすが!」
「それに、美月ちゃんとの約束だもん。絶対守らなきゃって思ってさー!」
嬉しそうに笑う稜君に、私も満面の笑みを浮かべる。
約束していたその日、有言実行稜君は、本当に試合のMVPを獲った。
「MFでハットトリックって、凄すぎるよねー。しかも1アシストも!」
クスクス笑う私に、稜君はちょっと口を尖らせた。
「もし航太がいたら、3アシストくらいだったかもねー」
「ホントにー?」
「うん! そしたら、明日のスポーツ紙の見出しは絶対“MF川崎! 神業3ゴール、3アシスト!!”だったのにねー」
「大丈夫。今回のでも十分凄すぎるもん。絶対見出しは稜君だから!」
「あははっ! まぁ、スポーツ紙はどうでもいいとして」
「えー? どうでもいいの?」
目をパチパチとさせる私を見て、稜君はまた楽しそうに笑って言ったんだ。
「そのMVP、美月ちゃんのだよー。あげるって、約束したでしょー?」
「うん。嬉しい。すっごく嬉しい!」
「ホント?」
「うん!」
「じゃー……お返し欲しいなぁ。あー、でもお礼のお返しって変かっ!」
仔犬のようにコロコロ表情を変える稜君は本当に可愛くて、面白くて、見ていて飽きない。
こういう時に年下を感じるんだけど……。
「何が欲しいの?」
首を傾げながらそう訊ねた私に、稜君は魅力的過ぎる笑顔を浮かべた。
「美月」
「……っ」
「顔、真っ赤」
低い声で、どこまでも甘い言葉を囁く、男の人の顔をした稜君。
「ねぇ、貰っていい?」
「……うん。全部、あげる」
――幸せすぎる、その刹那。
私はこっそり思うんだ。
稜君との全ての時間を、しっかり胸に焼き付けておこう。
離れても、何度も何度も、思い出せるようにって思うんだ。