「お邪魔しまーす!」

元気よくそう言って、稜君の部屋に上がった。

私の声を聞いたからなのか、稜君の匂いに反応してなのかはわからないけど、足元に駆けて来たポーキーをゆっくりと抱き上げる。


「ポーキー、すっかり美月ちゃんに懐いたねー」

「うん! 仲良しだよねー、ポーキー?」

そのまま、ギューッとポーキーを抱きしめた私を見た稜君が、何故か唇を尖らせて、私の腕の中から可愛い仔ブタを取り上げた。


「軽くジェラシー!! ポーキー、交代!」

「ひどい! 私よりもポーキーなんだっ!」

「違う違う」

憤慨する私に稜君は、そんな返事をしたあと、足元にポーキーを下ろした。

そのまま私に向かって手を伸ばし、驚く私をぐいっと引っ張って、温かい腕の中にギューッと閉じ込める。


「言っとくけど、ポーキーは男の子だからね」

「そうなんだ!」

聞き忘れていたポーキーの性別が、ここにきてやっと判明。

そっかそっか。
ポーキーは男の子かぁ。

呑気な私の頭上から、稜君がポツリと言葉を落とす。


「浮気禁止」

「えー? ポーキーとだったらいいじゃん!」

笑いながら顔を上げた私だったけど、目の前にある彼の顔は、ちょっと困ったような表情を浮かべていて。


「美月ちゃん。俺、意外とヤキモチ妬きだったみたい」

「へっ?」

てっきりポーキーの話だと思っていたのに、どうやらそれだけではないらしい彼の言葉の意味がイマイチ理解できない私は、首を傾げて考える。


「俺だけ見てて」

「……」

――そっか。

“離れても”俺だけ見てて。

隠された彼の言葉に気付いた私は、そっとその背中に腕を回す。