「もしもし?」

「もしもし、美月ちゃん? 今、平気?」

「うん! 今、結衣の家なんだ。二人だけの女子会中」

「そっか!」

携帯越しの稜君は、私の返事に、ちょっと考え込むように時間を取った。


「何か……あった?」

「んー。今夜、少しだけ会えないかな? こないだの話で、ちょっと」


――ドクン。

稜君の言葉に、私の心臓が大きく反応する。


「移籍の事?」

「……うん」

さっきまでその辺にあった雑誌に視線を落としていた結衣が、もの凄く心配そうに私を見つめているから、ちょっと笑ってしまった。


「そっか! 稜君はもう家なの?」

「いやー、今から帰るとこ。もし無理そうなら、都合いい日でいいよ!」

「ううん! じゃー、あとで稜君の家に行ってもいい?」

「もちろん! その女子会とやらが終わったら連絡してー。迎えに行くから!」

相変わらず優しい稜君に、私はまたちょっとだけ笑みをもらす。


「じゃー、また後で連絡するね」

そのまま電話を切ると、結衣がじっと私を見つめていた。


「無理して笑っちゃってさぁ」

「しょうがないでしょ! 私は離れたって、稜君と別れるつもりないもん。だから、残りの時間を無駄には出来ないんです!」

それが、悩みに悩んで出した、私の結論だった。

信じられないくらい淋しいし、その事を考えるだけで泣きそうになるけど、稜君が日本を離れて一人で頑張るって決めたんだから。

私は絶対に、それを応援するんだ。

私が淋しいなんて言ったら、稜君は絶対に気にしちゃうから。


だから私は――

“淋しい”

その言葉を、稜君の前で口にするのはやめようって、心に決めたんだ。

言葉してしまうと、それがどんどん大きくなるのは、嫌というほどわかっているから。