「稜君……」

「なーに?」

「体、温かいね」

「うん。そうでしょ?」

私を抱きしめる彼の腕に手を添えた私は、そっと後ろを振り返った。


「ん?」

ちょっと首を傾げる稜君の顔に、ゆっくり顔を近づける。

一瞬、目を見開いた稜君だったけど……。

「どうしたの?」

いつもより少し低い声で、わざとらしく笑いながらそんな風に言うから。


「わかってるくせに」

「言ってくれないと、わかんないよー」

「キス、して?」

私の口から零れてしまう、そんな言葉――……。


――それなのに。

「たまには美月ちゃんからしてよ」

不敵に笑う稜君に、私はどうしても勝てそうにない。


「意地悪」

首に腕を回したままの体を、稜君にギュッと抱きしめられながら、そのキレイな唇に、そっと唇を重ねた。


ゆっくり離した唇に、

「――……っ」

今度は、稜君が噛みつくようなキスをするから……。


「――そんなキスされたら」

「え?」

「私がダメになっちゃうじゃん!」

不貞腐れながら、つい本音を零してしまう。


一瞬、真顔で見つめ合った稜君と私。

でも、次の瞬間にはクスクスと笑って。


「でも、今日はここまで」

もう一度、お互いの体温を確かめるように、ギュッと抱きしめ合った。


――こんなに優しくて幸せな恋愛は、きっと最初で最後。

本当にそう思ったんだ。


私を、誰とも比べない稜君。

稜君が私だけを見つめてくれるから。

だから私は、こんなにも私らしくいられるんだよ?


稜君。

あなたに出逢えて本当に良かったって、心から、そう思う。