「お先に頂きましたー」
お風呂から出て、ソローっとリビングのドアを開けた私の声に、稜君が振り返る。
「……えっ!? な、何!?」
そのまましばらく、顔をじーっと見つめられたから慌ててしまった。
「いや、お化粧してないトコ初めて見たから!」
「えっ!? もしかして“スッゴい顔違う”とか思った!?」
稜君の思いがけない発言に、今更ながら、パッと顔を隠す。
だけど稜君は、驚いて目を見開いた後、少し考え込むように上を向いて。
「そう言われれば、ほんのちょっと幼く見えるかも?」
「うえぇぇー……」
幼いって、褒め言葉?
よくわからないけれど、微妙に変な声が洩れてしまう。
そんな私に、稜君はいつものようにニッコリ笑って、柔らかい口調で言葉を続けた。
「どっちも可愛い。それに、“美月ちゃんが、俺の彼女になったんだぁ”って思った!」
「……っ」
この人は。
何でこんなにも、私の心をコショコショ、コショコショとくすぐるんだろう。
嬉しいけど、やっぱりちょっと恥ずかしくなって、頭をかきながら照れ笑いをすると、稜君がふわりと笑う。
その表情に心がまたほっこりして、頬を緩めると、稜君の後ろにあるテレビが視界に入った。
「あれ?」
「んー?」
「それ……」
私の視線の先には、大きなテレビがあって。
「あぁ、ちょっとおベンキョー!」
「対戦相手……じゃないよね?」
映し出されていたのは、今度の試合とは全然関係ない、国内リーグの試合だった。
「うん。今度、航太出ないから、他のFWの人の動きの確認!」
その言葉が私に、目の前にいる稜君がトッププロだという事を思い出させる。
「稜君」
「ん? どうしたのー?」
「……ううん! 何でもない」

