「稜君? 大丈夫?」
「……もちろん!」
元気に答えているようなその声も、やっぱりいつもとは少し違う気がする。
何か稜君が楽しい気持ちになれる話題はないかな……。
稜君の胸に顔を埋めたまま、ちょっとだけ視線を横にずらす。
――あ。
「ねぇ! 写メのナマケモノって、あの子?」
私が指さす先には、部屋の隅に置かれたソファーに腰掛けるナマケモノ。
画像からイメージしたものよりも、かなり大きい。
「あー、そうそう! ひどすぎるよねっ!! ナマケモノって!! 俺がどれだけチームの為に、身を粉にして戦っているか……」
「あははははっ! でも可愛いからいいじゃん、ナマケモノ!」
私のその言葉を聞いて、稜君の動きがピタリと止まった。
「あーあ。また“可愛い”って言っちゃった」
「え?」
「前にも言ったでしょ? 男に対する“可愛い”は褒め言葉じゃないって」
「ち、違うよ!! あのぬいぐるみの話ね!!」
慌てて頭をブンブン振った私を見て、稜君はちょっと口を尖らせる。
「……しかも、そこまで拒絶されると手が出せないんだけど」
「え?」
「俺は美月ちゃんのこと好きなんだよ?」
「……」
「それに、こんな風に触れられる距離にいる」
最初の表情とは一変して、真剣な顔で私を見つめた稜君は、そっと私を胸から離して頬に手を添えた。
「稜君」
「うん?」
「私も好きだよ?」
私の言葉が思いがけないものだったのか、一瞬目を大きくした稜君は……
次の瞬間、背筋がゾクリとするほど妖しく笑って言ったんだ。
「それ、反則」
「え……?」
小さく囁かれたその言葉が耳に届くと同時に、塞がれた唇。
そして再び、きつく抱きしめられた体。
何度も何度も角度を変えて、稜君の唇が重ねられる。
それは、どんどん深くなって――。
「……んっ」
小さな、吐息が洩れ出てしまう。
ドクドクと激しく脈打ち続ける心臓に息苦しさを感じて、稜君の胸を無意識のうちに押し返す。

