稜君は、その気持ちを解っていたのかもしれない。
「いいよー! ただ、もうちょっと膝が良くなってからね?」
それを聞いた子供達は、本当に嬉しそうに笑って頷くと「約束ねー!! じゃーまたねー!!」と、大きく手を振りながら病棟に戻って行った。
何か、やっぱり稜君は凄いかも。
子供達にあんなに嬉しそうな顔をさせられるなんて。
だけど、感心するのと同時に小さな不安が湧き上がって、子供達の背中が見えなくなってからそれを口にした。
「いいの?」
「もちろん! 膝がもうちょい良くなってからだけどねー」
「そっちもだけど……私の事」
「へ?」
「彼女とか」
「だって彼女でしょ?」
さも当然のように、キョトンとしながら目を瞬たかせる稜君に、胸がキュンとしたのは……否めない。
「そう……だけど!」
私の返事に“うんうん”と頷いた稜君は、ちょっとだけ真剣な顔をして言ったんだ。
「大丈夫だよ」
「……え?」
「俺だって、美月ちゃんを守るくらいは出来るから。だから、心配しなくていいんだよ」
そう告げた稜君の顔は“男の人”の顔。
彼の真っ直ぐな瞳に見つめられると、どうしても心臓が騒いでしまう。
「それで?」
「え?」
“それで”、とは?
「チューは?」
「はっ!?」
「しとく?」
驚いて目を見開く私に、スッと顔を寄せる。
「……っ」
その距離は、ほんの数センチ。
多分、顔の真っ赤な私は、ただ息を呑む事しか出来なくて……。
そんな私の唇に、彼の息がフッとかかった。

