「それで、入院してから“とにかくメールだけでも!!”って思って、何個もメール作ったんだけど、上手く書けなくてさ」
「そう……なの?」
「うん。しかも、書いて消してを繰り返しまくってたら、バッテリー切れちゃうし」
思いもよらない事実に目を瞬かせると、稜君は困ったように頭を掻いた。
「それで、今日やっとねーちゃんに充電器持って来てもらったら、美月ちゃんが来てくれた」
「……っ」
その表情と、スッと伸ばされたその指に、私の心臓が大きな音を立てる。
「美月ちゃん」
頬にそっと触れた手の平が、凄く温かい。
「俺は、ずっと美月ちゃんの事が好きだったんだよ?」
「“ずっと”?」
私達が知り合ったのは、数ヶ月前。
おねぇーと航太君の結婚式で初めて逢ったはずなのに、“ずっと”って……?
「そう。多分、もうずーっと前から」
逸らすことなく私の目を見つめて、優しく笑った稜君は、頬に添えていた手をパッと離して言ったんだ。
「これで、なんの躊躇もなく美月ちゃんに触れられる」
「――えっ?」
突然の会話の切り替えに驚いた、私の声が先だったのか。
それとも、稜君のその動きの方が先だったのか。
手首を強い力で引っ張られた私は、そのまま稜君の広い胸に倒れ込み、気付いたらその腕の中に、ギューッと抱きしめられていたんだ。
「美月ちゃん」
彼の振動さえも、伝わる距離。
「大好き」
その距離が、驚く程に心地いい。

