もうイヤだ!!
稜君が、おねぇーを好きだという事だって、彼女がいるかもしれない事だって、ちゃんと解った上で。
それでも気持ちを伝えようって――そう思って来たはずなのに。
しばらく走った私は、息を切らせながら、人目を避けるように中庭の日陰にしゃがみ込む。
「イヤだ……」
今までは大抵の事には耐えられたのに、稜君を好きになってから、私の涙腺はおかしくなってしまったんだ。
「涙、止まってよー……」
膝に顔を埋めたまま小さく呟く私の後ろで、草を踏みしめる音が聞こえた。
「はぁ……。やっと追いついた」
「……っ」
背後から聞こえたのは、少し息を弾ませる稜君の声。
「美月ちゃん?」
――なんで。
優しくかけられるその声に、私の胸は大きく震えて、呼吸をするのが苦しくなるほど痛んでしまう。
その痛みに耐えきれそうにない私は、立ち上がって彼に背を向けたまま早足でまた駆け出す。
「ちょ、ちょっと! 美月ちゃん!?」
慌てたような声を上げながら、後ろから追いかけて来る足音が聞こえたけれど、とにかく彼から離れないと苦しくて、私は振り返ることなくまた走り出す。
だけど、次の瞬間。
「――……つっ!!」
痛みを噛み殺すような、そんな声が聞こえて、驚いて後ろを振り返った。
そこには、膝に手を当てて顔を顰める稜君の姿が。
「え!? まだ、走っちゃダメなんじゃ……」
彼に駆け寄ることも出来ず、立ち尽くす私の言葉に顔を上げた稜君は、肩で息をしながら茶色い瞳を真っ直ぐ私に向ける。
「だったら、そこにいてよ」
そして、私の心の中を覗き込むように、じっと目を見据えたまま、その言葉を口にしたんだ。
「なんで泣いてるの?」

