一階に下りて、すぐにテレビを点けた私は、そのまま対面キッチンに向かってお湯を沸かし始める。
「なに飲もうかなー」
誰もいないキッチンで独り言を口にしながら、さっきの結衣の言葉を思い返していた。
自分の魅力はサッパリわからないけれど、あのタクシーでの出来事があってから、ちょっとだけ期待してる部分はあったんだ。
好きか嫌いかで聞いたら、稜君の中で、私は“好き”の部類に入ってるんじゃないか……なんて。
だけど、今はもうよくわからないや。
「はぁ……」
また吐き出してしまった溜め息に、「溜め息吐くと妖精さんが死んじゃうからダメッ!!」なんて、謎の言葉を口にしていたおねぇーをフト思い出し、ちょっとだけ楽しい気分になった。
さすがおねぇー。
こんな時まで私を笑わせてくれるとは。
「妖精さんねぇー」
呟いた私の正面にあるテレビには、後半のキックオフを待つファンの大きな歓声の中、ピッチに戻って来た稜君の姿が映っていた。
アップで映し出された稜君は、一瞬真っ青な空を仰ぎ、次の瞬間、静かに目を伏せる。
その表情に、私の胸はギュッとしめつけられて、たったこれだけの事に痛みすら覚えてしまう。
「いつの間に、こんなに好きになってたのかな……」
小さく呟く私の横で、沸騰したお湯がシュンシュンと音を立てていた。

