――やっぱり、人前で泣くとろくな事がない。
少しボーっとしながらそんな事を考える私に、結衣が声をかけてきた。
「ねぇー?」
「んー?」
「わかんないけどさ、」
何故か難しそうな顔をして、前置きをした結衣。
「稜君って、美月のこと好きなんじゃないの?」
「は?」
ありえない。
結衣……。
あなた、ありえないですよ。
私だって、自分の価値というか、魅力というか、それがどの程度かは分かっているつもりだ。
間違えても、稜君ほどの人に好きになってもらえるような要素は見当たらない。
だけど、呆れたような視線を送る私を無視したまま、結衣は話を続ける。
「だって稜君、好きな子にしか触らないとか言ってたんでしょ?」
「うん、まぁ」
「なのに、話し聞いた感じだと、意外とアンタにペタペタしてるじゃん」
「“ペタペタ”って……」
その微妙に可愛くない表現に、思わず顔を顰める。
「それに、今回の事だって。ヤキモチじゃなかったら、何でそんなに怒るのか、わかんないじゃん」
「いや、怒ってたかどうかはわかんないけど……」
「でも、連絡とかもこないんでしょ? 何とも思ってないなら、そこまで避ける理由がわかんないんだよねぇ」
「それは――自分の前で泣かない私が、翔太さんの前では泣いてたから、男として悔しかった……とか?」
「稜君って、そんなに心が狭い人なの?」
結衣のその一言に、今までの稜君の事が頭に浮かんで、胸がギュッとなる。

