「……っ」
「今日、試合でしょ?」
結衣が変えたチャンネルに映るのは、たくさんの歓声の中、グリーンのユニフォームに身を包み、ピッチの上でプレーをする稜君の姿だった。
「珍しいね。美月、毎試合観てそうなのに」
「……ホントだね」
「まぁ、そんだけいっぱいいっぱいって事か。取りあえず、試合観よう!」
眉尻を下げて“しょうがないなぁ”なんて笑う結衣に、私も曖昧な笑顔を浮かべて小さな画面に目を向けた。
前半の途中から観たその試合は、1-1の同点。
「やっぱり上手だね」
「……うん」
小さく呟かれた結衣の言葉に、画面から視線を逸らさずに返事をする。
『今日も川崎はいい動きをしていますね』
『そうですねー! やはりこの視野の広さは、川崎の大きな武器ですよねー』
実況と解説のやり取りが、テレビのスピーカーから聞こえていて、稜君がどれ程すごい人なのか、そして、自分がどれ程すごい人に恋をしているのか……。
それを、まざまざと見せつけられた気がした。
そんな事、最初から解っていたはずなのに、何だか泣きそうになる。
会う事はそんなに出来なかったけれど、殆ど毎日メールをしていた稜君は、最近の私にとって、確実に一番近い存在だった。
それなのに、どうしてこんな事になっちゃったんだろう。

