いつまでも鳴り止まない着信音に、道行く人が時々振り返る。
だけど言葉を遮られた私は、それでも稜君を見上げたまま。
だって、このまま話を終わらせるのは何だか怖い。
「携帯、鳴ってるよ?」
「でも……っ」
焦る私とは裏腹に、どこまでも“いつも通り”の稜君は、私の頬からそっと手を離して柔らかい笑みを浮かべた。
「いいから。俺も、もう行かないといけないし」
彼の言葉と表情に、胸がドクドクと嫌な音を立てる。
――このまま離れちゃ、ダメだ。
頭ではわかっているのに。
稜君の表情が、まるで“もういい”と、私と話す事を避けたがっているいるようで……。
言葉を絞り出すことも出来ず立ち尽くす私に「じゃーね!」と声をかけ、また歩き出した稜君は、一度も振り返る事なく、そのまま行き交う人の群れに消えて行った。

