翔太さんは、稜君の違和感に気付いていない……?
それとも、私の考えすぎ?
困惑する私からスッと視線を逸らした稜君は、手招きをする翔太さんに頷き、喫茶店の入口に回った。
「翔太くん! 久し振りー! って、こないだ試合で会ったけどー」
私達の元にやって来た稜君は、いつも通りの稜君で、さっきの違和感は気のせいだったのかもしれないと思った。
――でも。
「こんな所で何してんだよ」
「えー!! 呼び出したのそっちでしょー!?」
「……何だっけ?」
「ひどいっ!! 書かないといけない書類あるから来いって言ったの、そっちじゃん!!」
「あぁ、はいはい。あれね。でも俺じゃないだろ。呼んだの、久保田さんだろ?」
「そうだけど、同じようなもんでしょー?」
笑い合いながら、楽しそうに話をする二人。
だけどその間、稜君の視線が私に向く事は一度もなかった。
「俺、練習抜けて来たから、もう行かなきゃー」
一通り会話を終え、翔太さんに声をかけた稜君の視線が、やっと私のそれとぶつかる。
その瞳に取り越し苦労だったかと、ホッとしたのも束の間。
「お邪魔しました」
だった一言、少しだけ笑いながら言うと、そのまま私達に背を向けて喫茶店を出て行ってしまった。
「……」
笑ってるけど、違う。
やっぱり何かが、違う。
心臓がその“何か”を必死で伝えようと、早鐘を打ち始めるから。
「翔太さん、私……っ」
「え?」
気が付いた時には、もう席から立ち上がっていた。
「すみませんっ!! あの、これ!!」
慌ててお財布を取り出した私の手を翔太さんは押さえると、
「いいから、早く行かないと」
まるで何かを覚ったかのように、にっこりと柔らかい笑顔を浮かべる。
「……ごめんなさい!! ありがとうございます!!」
翔太さんに頭を下げてお礼を言うと、稜君の後を追って喫茶店を飛び出した。

