「ごめん……なさい」
私は、翔太さんの傷をまた開いて、えぐってしまったんだ。
「翔太さん、ごめんなさい」
航太君の事が大好きな、翔太さん。
だけど、おねぇーのことも本当に大切にしてくれている、翔太さん。
それなのに、私は――。
決心して聞いたとはいえ、結果として翔太さんを傷付ける事になってしまって……。
自分の軽はずみな行動に、また頬を涙が伝い落ちる。
だけど、視線を上げた翔太さんは笑って言ったんだ。
「謝らなくていいんだよ」
「でも……っ」
「美月ちゃんは、優しい女の子だね」
慌てて口を挟んだ私の頭を、大きな手でポンポンと撫でる。
「昔の事は、もうやってしまった事だから。どんなに後悔しても、もう取り返しはつかないんだ」
私の目を見つめたまま、穏やかな声で話す翔太さんは、きっとおねぇーや航太君がそうしてきたように、苦しんで、色んな物を乗り越えて来たんだろう。
「だからその分、この先あの二人に何かあったら、何に代えてでも守るよ。まぁ、航太には“俺が守るからいらねぇ”って言われたけどね」
翔太さんはそれまでの真剣な表情を、いつもの優しい笑顔に変え、まるで私に“わかった?”と言わんばかりに首を傾げた。
まだ涙の止まらない瞳で、それを見上げた私は、何度も何度も大きくと頷いた。
翔太さんは、たくさん心を痛めて、自分を責め続けて……。
きっと、やっとここまで辿り着いたんだ。
この人も、とても優しくて、とても強い人。
そう思って、少し微笑んだ瞬間――。
“コンコン”
窓際に座る私達のすぐ横で、そのガラスを叩く音が聞こえた。
私がその音がした方向に視線を向けるよりも早く、正面に座る翔太さんが声を上げたんだ。
「あれ? 稜だ」
「え?」
その声に驚いて、涙に濡れたままの瞳を向けた窓の外には、確かに稜君が立っていて……。
彼の茶色い瞳が、一瞬私に視線を向けられる。
「……っ」
どうしてだろう。
上手く言葉では言い表せないけど、その視線がいつもとは違う気がした。
ううん。
いつもと、同じ。
だけど……どこか違う。
よくわからないけど、そう思った。

