「それって、航太君のサッカーの為に、問題が起きないように……無理矢理、引き離したって事ですか?」
「……」
「二人の気持ちを無視して……?」
「あぁ」
淡々と語られる翔太さんの言葉に、悲しみなのか怒りなのか。
どちらなのかはよくわからないけれど、自分の手がカタカタと震え出す。
――だけど。
目の前に座る翔太さんの、いつもと同じように私を真っ直ぐ見据えるその瞳が、小さく震えていてる事に気付かないはずがなかった。
「で、でもっ! 翔太さんのせいじゃないじゃないですか!! だって翔太さんは板挟みで、仕事でやらされて……っ」
そんな言葉を吐き出しながらも、本当はよくわからなかった。
私は、無関係と言えば無関係。
だけど、おねぇーと航太君が大好きで……。
あの二人の、憤りを覚えるような過去を知ってしまって、その悲しみや怒りを一体どこに向けたらいいのか。
他人だったら――翔太さんがどんな人かを知らなかったら。
もしかしたら、翔太さんを責めていたかもしれない。
だけど、違う。
それはきっと違う。
それがわかっているのに、その感情をすぐに押し殺すことの出来ない私の声は尻すぼみで。
そんな私の前に、スッと差し出されたハンカチ。
気付いたら、涙がボロボロと零れ落ちていた。
その時のおねぇーの気持ちと、何も知る事の出来なかった、航太君の気持ち。
そうするしかなかった、翔太さんの気持ち。
――そして、稜君のあの言葉。
“高三の時、急に雰囲気変わってさ”
“深く人と関わらないようにしている感じで”
パズルが合わさるように、ピタリと噛み合った全ての言葉達。
もう、涙を抑える事が出来なかった。
ハンカチを受け取った私に、優しい笑顔を向けた翔太さんは、フッと一つ息を吐き出す。
「ありがとう美月ちゃん。でも違うよ。最終的な判断をしたのは、俺だ」
「……っ」
「あの時の俺は、二人の将来より、航太だけの未来を――サッカー選手としての未来だけを守ろうとしたんだ。……それに、自分の事も」
悲しげに表情を歪める翔太さんの視線が初めて私から外されて、俯いて、吐き出す呼吸は震えていた。

