どこか悶々とした気持ちのまま迎えた次の日。
珍しくお得意様と外で会う約束があって、私は隣の駅のオフィス街を歩いていた。
「美月ちゃん?」
不意に後ろから声をかけられ、振り向いた視線の先には、
「翔太さん!」
今日も癒し全開の笑顔で微笑む、翔太さんの姿があった。
「久し振りだねー。元気だった?」
「はいっ! 元気です!!」
「そっか。仕事中?」
無駄に元気な私の返事に、クスクスと笑いを零す翔太さんは、私の服装を見て小首を傾げる。
「あ、はい! 今ちょうどお得意様の所からの帰り道で」
「そっかー」
「翔太さんは?」
「あー、俺? 俺は……そこ。協会の本部だから」
後ろにチラッと視線を向けながら指をさした先には、グレーのコンクリートの建物。
「ホントだ! サッカー協会の本部って、こんな所にあったんですねー」
建物を見上げる私に、翔太さんは浮かべていた柔らかい表情を崩すことなく、また口を開いた。
「美月ちゃん、お昼はもう食べた?」
「えっ?」
驚いて視線を上げると、目の前には答えを待つように、その長身を少し屈めて私の顔を覗き込む翔太さんがいて。
その姿は、やっぱりちょっと魅力的。
「えっと、まだですけど?」
「じゃー、一緒にどう?」
「え? いいんですか?」
「もちろん! おごるよ」
少しドギマギしながら答えた私に、ニッコリと笑顔を浮かべると、私の歩調に合わせるようにゆっくりと歩き出す。
身のこなしまでスマートなこの人は、私の親族なんだよねー。
私に“兄”がいないせいもあるのかもしれないけれど、何だか不思議な感覚。

