今日から隊に高校生活が始まる。

初めての通学路

見慣れない人

そう、私の長い付き合いの心友もいない。
私の心友は別の高校に進学した。
私は1人なんだ。
心友から「私立の○○高等学校受かったー!」
って、メールがきたときは正直返信する気にもなれなかった。
けど、心友が一番良い道だと選んだことなのだから仕方ない。

私は私立なんて、お金がかかるし勉強の争いがすごい場所なんかには行く気になれなかった。
いいんだ別に。
私はただ平凡に何事も無い毎日を過ごしたいだけ。
高校なんて別にそれでいい。
中学と違って、半強制的に部活に行く必要もないし、小学校からの付き合いの人も少ない。
本当の自分でいる必要もないから。

私は元々、ありのままの自分を見せるのが嫌いだしニガテだ。
っていうか自分が嫌いだから。
でも心友の高野莉那。
莉那だけは受け入れてくれた。
だから私も心を開いた。
今現在、信じている人なんて片手で数えるくらい。
親と莉那と…。
ほら、こんなに少ない。

「ここの制服可愛いねー」

私が歩く後ろから聞こえる女子の声。
なんの変哲もなく私は1人だ。
中学の頃、隣にいた莉那はいない。
いつまでも引きずってるわけじゃないけど。
多分、これから私はどんどん口数が減るんだろうな。
自覚してるくらいだから。

「痛ったぁーい!!!!!!」

何事?
あぁ、さっきの女子グループか。

「聖菜、大丈夫?痛かったでしょ?」
「ありがと杏里…。バンソコある?」

くだらない友達ごっこかよ。
女のくせにバンソコくらい持ち歩かないでどうする。
女失格だな。
まぁ、私もそこまで完璧じゃないけど女失格までじゃない。
ハンカチ、ティッシュは当たり前。
少し大きめのポーチを普段から常備している。
”備えよ常に”その通りだから。

「ごめん聖菜!バンソコ忘れちゃった…」
「どうしよう…」
「どうぞ」
「え…?」
「バンソコ、ないんでしょう?私もこの高校だし。」
「ありがとう」

あげるつもりなんてなかったけど。
でも私は昔から困ってる人を見てしまうと助けなくちゃいけないって体が動く。
母親を火事でなくしてるせいもあるけど。
でも可愛い子。
私もなりたい。

「一緒に行かない?」
「…私?」
「うん!」
「いいの?」
「もちろんだよ!友達になって!私、山倉聖菜!」
「ありがと…。私は、笛吹優香」
「私もよろしくね!私は、菅田杏里!」
「よろしく」

早速、友達なんてできるんだ。
人の力ってすごい。
改めて思った。