キミ色症候群

その沈黙を破るのは、勿論俺ではないから、天野だ。



「えーっと上野くん」

「……」

「同じ『野』がつくね」



天野、上野。


だからどうした。
どうでもいい。


返事はせず出てくるのは欠伸のみ。
だからまた沈黙。


でも俺はそれが苦痛ではない。


喋るの得意じゃないし。
口動かすのダルいし。
静かに眠りたいし。



だから他の教室の教師の声やチョークの音だけしか響いていないこの廊下は結構心地良い。



…眠たい。







と、再び目を閉じようとした時、俺の視界の端に女の姿が飛び込んだ。