君が置いてった言葉。



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「貴方の前の患者ですか?」



「ええ」



「少し、精神状態が不安定でしてね」



「えっ」



「いつも傷をつけてここに来るんです」



「傷をつけて、ですか」



「はい。玲奈さん、と言ったかな。」



「・・・」



「もう随分前から来ていて・・・
 どうやら誰かにDVを受けているらしく、
 普段は明るくて良い方なのですが
 “特定の人”に会うと
 人相が変わってしまうようなんです」



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溜息をついて医者はそう言った。



俺の視界は闇へ堕ちた。



DV・・・。


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一体、玲奈さんの身に



何が起こっていると言うのだ。



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それに傷って・・・



傷・・・――――


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「あっ」


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声が出てしまった。


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「どうかしましたか」



「い、いえ・・・。
 つかぬことをお聞きしました。
 失礼しました、それでは」


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そう言って俺は



診察室を後にした。


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一人きりの帰り道、



俺は手首を摩って脈を感じた。


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恐らく傷というのは



リスカだろう、と



心が答えた。



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