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「はい、血液を摂取します」
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そう言われている時も
俺は上の空だった。
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さっき、診察を終えて出てきた人は
玲奈さんだったんだ。
しかもあんな表情をして
一体どうしたと言うんだ。
何があったと言うんだ。
ただ、玲奈さんの安否が心配だった。
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「・・・はい。今月の検査は終わりです」
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気付けば、
俺の大嫌いな検査は終わっていた。
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玲奈さんのことしか考えていなかったから
きっと痛みさえも感じなかったんだ。
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俺が一番嫌な血液検査も
いつの間にか終わっていたほどだった。
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「あの.....」
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俺は主医に問うた。
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「はい?」
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声の低い老いた医者は
カルテを見ながら返事をした。
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「先ほどの患者さん、どなたさまですか?」
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