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「あーあ・・・」
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仕事帰り。
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まだ明るい空に手をかざして
俺は病院に向かう。
向かう、というか
勝手に体が歩いて行くんだ。
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怖いけど
でもやらなくてはならない宿命が
俺の体には宿っているから。
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「・・・はあ」
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小さく溜息をついた俺は
道路のど真ん中
自分に心臓のあたりを
服の上からぐっと握って目を瞑った。
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鼓動の音が耳の奥まで聴こえてくる。
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俺の生きている証が
音となって俺に生命を与えている。
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「・・・行くか」
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何でこんなに元気に動いている心臓なのに
病気なんて持ってしまったんだろう。
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そういう疑問を抱いた時には
俺は大きな市立病院の目の前に
立っていた。
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