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あの日の出来事が
未だに忘れられない。
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「・・・」
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仕事場に来ても何も集中できない。
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玲奈さんとの再会。
嬉しい気持ちで弾むはずだったのに
玲奈さんの手首には
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・・・“リスカ”の痕があった。
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「何で・・・」
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何でリスカの痕なんてあるんだよ。
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そう思いながら
頭を掻き毟った。
その瞬間、
玲奈さんの言葉が頭に過った。
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『雄太郎の、馬鹿ーっ!!――』
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もしかして・・・
その雄太郎って奴に、
何かされてるんじゃ........。
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ボカッ
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「痛っ」
「こら、ぼけーっとしてるんじゃない」
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そう言って
俺を新聞紙で叩く店長。
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「・・・別にぼけーっとしてる訳じゃないです」
「何か・・・考え事でもしているのか?」
「!・・・。違います」
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図星だったのが恥ずかしいけど
そんなことを言っている暇もない位
今の俺の頭の中は・・・
玲奈さんでいっぱいだった。
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「あ。そうだ。お前今日は午前で終わりだろ?、仕事」
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店長がカレンダーを見ながら
独り言のように呟いた。
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「え?何でですか?」
「今日はお前、月1の検査じゃねえか」
「あ・・・」
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そうだ。
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今日は一カ月の中で俺が一番嫌いな
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体調検査の日だった。
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