君が置いてった言葉。



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「・・・あの、ね」




「はい?」




「私今、悩んでるの」




「・・・そうなんですか」




「悩んでると、この海に来るの」


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そう言って




玲奈さんは




砂浜の硝子の様な砂を




小さくすくっては




さらさらと落とした。


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その砂浜には




玲奈さんの切なそうな表情が




映っている様な気がした。


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「俺も悩んでるとこの海に来ます」




「そうなんだ」




「俺、人間関係とか苦手で。
 誰かを怒らせたり、傷つけたりしたら
 この海に来て叫ぶんです」




「叫ぶ?」




「そうです。思いっきり。スッキリしますよ」




「・・・」


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すると




何も言わずに立ちあがった玲奈さんは




海辺の方に走って行って




手をメガホンの様な形にして


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「雄太郎の、馬鹿ーっ!!」


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「えっ....」


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「馬鹿っ、バカバカバカ!!」


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雄太郎って・・・



誰なんだろう。


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「・・・」


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「.......はぁ、はぁ」


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息を切らせながら




玲奈さんは俺の方に戻って来た。



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俯き気味だった顔を上げた、




玲奈さんの表情は




先ほどより少し爽やかな顔をしていた。


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その表情を見て、




少し安心した。


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・・・ものの、



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雄太郎って・・・いったい何者だ.....?


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俺の中で




新たな蟠りとなった、



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疑問が産まれてしまった。


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