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「海しか友達がいなかったから.....。」
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そう言った風雅君は
透き通るような
漆黒の瞳を海に傾け
じっと見つめた。
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その瞳は真実さえ見透かすような
奥深い光を放っていた。
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そんな風雅君の眼を見たとき
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“この子は何かを抱えている”
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私は瞬時にそれを悟った。
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「・・・そう」
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私はその一言だけ返して
無言の空間に体を委ねた。
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風雅君を一瞥する。
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彼は未だに海を見つめたままだった。
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その横顔が不覚にも
格好いいと思ってしまった。
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長い睫毛は海に刺さるかのように思えて
少し恐ろしく思ってしまった。
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「あ・・・すいません。しんみりした空気にしてしまって...」
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そう言った風雅君は
眉毛を顰めて少し怪訝な表情をした。
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「・・・いいの。無理しなくていいのよ」
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そう言った。
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すると風雅君は驚いた表情をした。
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貴方は無理をしている。
何かで自分を覆っている。
私には何かを隠している――――。
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私は全てが分かるの。
・・・風雅君の事なら何でも分かる。
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自分の中で.....
そんな気がしてならないの・・・。
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