in新宿 AM2:30
こんな時間なのだから人がいないのは当たり前。
…と言いたいところだが、それはどうも田舎だけでの話のようである。
若者の街、と言って良いであろうココ新宿では、この時間になると裏の新宿が顔を出す。
その世界を楽しむのは主に十代、二十代の若者達だ。
・・・藤永悠も例外ではなかった。
0時を回ると、この世界へと顔を出す。
しかしこの少年、他の若者とは何かが違う。
煙草をふかすわけでも酒を飲み明かすわけでもなく、ましてや女達と絡み合うわけでもない。
周りの輪から外れ、人目を避けるように電柱の陰に身を隠し、ペタリ、とその場に座り込んだ。
だが、人というのは、「普通」以外の人種や物には惹かれるという習性が備わっている。
この少年の、カバンの一つも持たず、また、ジーンズにトレーナーという十二月下旬の季節を全く感じさせない服装の人種は、そんななかで一際目立っていた。
夜の街は、なんというか、色々な境目というものがないような気がする。
男女の堺、年齢の堺、色々なものの個性が失われ、ぐちゃぐちゃに見えながらもなぜか一つにまとまっている。
そんな世界は、全体的に「自由」だ。
皆なにかをこの場に求めて、今自分に無いなにかを埋めたくて、どうにか形だけでも一つになれないかと、そんな期待や不安や寂しさを持ちよせ、一つの輪を作りたがっている。
自分はひとりじゃないのだと。
自分は誰かに必要とされているのだと。
自分は、今ここに、生きているのだと。
それだけを感じたくて。