*田中幸大は気になっていた。
夕方、自分がたじたじにされてしまったあの女の子のことが。


──『生徒がいる中にバイクで乗り込むのは迷惑だ』

『用がないなら早く出ていけ』──


遊んでる時も頭から離れなかった。

あの女の子、一体何なのだ。

俺に屈することなく向かってきていきなり色々注意された。

それなりに女の友達や知り合いはいるが、あんな奴は見たことねぇ。

しかも、何故かあの時何も言えなかった。

今まで会ったことのないタイプだから、ちょっと呆気に取られただけなのか?


「だーーーーっ!!あんな可愛げの無いイキり女が、どうしてこんなに気になるのだーっ!!」


ベッドでジタバタ。

どう考えてもすっげーヤな女なのに、ムカつくとかより単純に気になるという感情が強い。

一体どうしてしまったのだ俺!!


「…寝よ」


*田中幸大、十七歳の夏。
これが彼に運命の大きな出来事をもたらす前兆であった。