恋涙歌

二人が教室に入るのと同時にチャイムが鳴った。





「ふー。ギリセーフ」




「け、桂太、は、はやい…!」




「あ゛。ごめんヒカリ…」






ゼェゼェと荒い息を整えて、自分の席にすわる。





「いや~中谷来てなくてよかった」




「そういえばいないね…」





中谷と言うのはこのクラスの担任で天然の少しはいった女性の先生だ。




ガラッと音を立てて教室のドアがあく。
騒がしかった教室は一瞬にして静かになる。



入って来たのは予想外に校長と…今朝の男性。




「えー、中谷先生がこの度産休に入られたため今日から代わりの先生を紹介する」




あー、ついにか。と、クラス全員の心の声がそろう。
中谷はずっとお腹が大きかったのだ。

私を含めた女子軍はもちろん、男子も彼女を気遣っていたほどに。






「蒼井遙(カナタ)です」





女子からは黄色い声があがる。
私も声はあげなかったが、その中の一人だった。





校長は一通り紹介を終えると教室を出て行く。
あとは生徒からの質問攻めだ。






「センセー!好きなことは?!」




「先生いくつ!?」




「読書をしながらひなたぼっこかな、年は25」





可愛い、と女子は騒ぐ。






「先生彼女はいねーの?!」




「さぁどうかな」





なんだよそれ~、と質問した男子がいう。





「あいつ、今朝のやつだよな?」





「…」





「ヒカリ?」







桂太は私の顔を覗きこんだ。
私はそれに気づかずにボーッとひたすらに新担任のほうをみつめる。


桂太はドクっと心臓がはねるのを感じた。
これからの日々に胸騒ぎがした。


そんな彼に私が気がつくことは…

なかった。