恋涙歌

こいつ、もう手を出したあとか‼



と、内心で突っ込む。





「(いくらなんでも早すぎでしょ。顔がいいと特よね)」





自分でも恐ろしいほど冷静に考える自分に自嘲した。
ふと、隣の男を見る。





「なに?」



「いや、別に?……はぁ」



「ひ、人の顔見て溜め息つくなよ!」



「え?別に?……はぁ」


「おい!」




まったくもって自分はこの男のどこがいいのだろう?なんだか泣けてくる。

ゆさゆさと体を揺さぶられながら私は思う。



「おいって!」



「あはは………ん?」




校門の近くで見慣れない男性を見つけて私の視線はそこにとまった。
背の高い、スーツを着た若い男性は先生だろうか。

男性はこちらに気づくとニッコリと微笑んだ。




「おはよう」




男性特有の低いテノールの透き通った声が響く。





「お、おはようございます」



「…って誰だ?」




桂太がツッコミをいれたが、私はそれよりもこの男性に魅了されていた。



スラッと長い足に整った顔立ち。グレーがかった瞳は真っ直ぐにこちらをむいている。
顔の一つ一つのパーツが完璧なまでに揃っている。
漆黒の髪は風になびかれて花吹雪と共に絵になっていた。